アップスケール・画像修復

アップスケールは解像度の小さな画像を大きくするタスクですが、ただ大きくするだけなら PowerPoint などでもできます。

しかし、低画質でガビガビした画像を単に 2 倍・4 倍に拡大しただけでは、ただ「大きなガビガビ画像」ができるだけで、情報量は増えません。

そのため、ここで言うアップスケールは 「画像を拡大する」「失われたディテールをそれらしく補い、画質を修復する」 、この 2 つをセットで行う技術を指します。

また、より画像修復に特化したものもあります。古い写真のキズを消したり、白黒写真に自動で色付けしたりするような処理も「画像修復」の一種として考えることができます。

どんな手法・モデルが使われているか、代表的なものだけ見ていきましょう。


GAN / 従来型アップスケール

GAN や従来型の超解像モデルを使ったアップスケールです。
Stable Diffusion 以前からある系統で、今でも軽量な処理として使われることがあります。

ESRGAN.json
  • ESRGAN
  • Real-ESRGAN
  • SwinIR
  • HYPIR

顔修復モデル(顔まわりに特化)

顔に特化して、ボケ・崩れ・低解像度の顔を復元するためのモデルです。
FaceSwapで有名なReActorという技術があるのですが、低解像度の生成しか出来ないため、後処理として使用されます。

  • GFPGAN
  • CodeFormer

拡散モデル系アップスケール・修復

Stable Diffusion などの拡散モデルを使って、画像を描き直しながらアップスケール・修復を行う方法です。

  • image2image
    • 画像を下敷きにして画像を生成する機能ですが、denoise 量を抑えることで、構図や内容をあまり変えずに「修復」として使うことができます。
  • Ultimate SD upscale
    • 単なる image2image では、そのモデルが扱える解像度や、PC のスペック上生成できるサイズに制限があります。
    • そこで、画像をタイル状に分割し、一つずつを image2image してから再度合体することで、より大きな画像を扱えるようにする仕組みです。
  • SUPIR
    • SDXL ベースの、アップスケール・画像復元に特化したモデルです。低画質な入力から自然な高解像度画像を復元することを目的としています。

拡散モデルでのアップスケールは、ある意味描き直しています。
そのため、単なる修復を超えて 「やり過ぎてしまう」 傾向があります。
もちろんこれも表現の一つですが、なるべく元画像を保持するアップスケールと区別して、Enhanceと表現されることもあります。


指示ベース画像編集による修復

最近の「指示ベース画像編集」モデルでは、テキストで指示するだけで、アップスケール・修復に近い処理をまとめて行えるものもあります。

専門のモデルを個別に用意しなくても、「この写真をきれいにして」「ノイズを減らして」「白黒写真に色を付けて」などと指示すれば、それらの処理をまとめてやってくれます。

Qwen-Image-Edit-2509.json

詳しくは「指示ベース画像編集」のページで扱います。


動画のアップスケール・動画修復

画像のアップスケールを 1 フレームずつ適用すれば、動画のアップスケールも一応は可能です。

ただし、この方法では時間的整合性がないため、チラつきやフリッカーが残る可能性があります。

動画専用のアップスケール・修復モデルは、前後フレームの情報も使うことで、チラつきやフリッカーを抑えながら画質を上げることを狙っています。

代表的な系統としては次のようなものがあります。

  • SeedVR2
  • FlashVSR

これらを、静止画のアップスケールとして使うことも問題ありません。むしろその用途でも人気が高いです。